第一回 里山の環境改善講座 「水脈と車道づくり」レポート ~ 修善の森トンボ・ビオトープ・プロジェクト

第一回 里山の環境改善講座 「水脈と車道づくり」レポート ~ 修善の森トンボ・ビオトープ・プロジェクト レポート

新たに2023年度(10月~翌9月)のトンボ・ビオトープ・プロジェクトが開始しました。本年度より、里山の環境改善講座と題して、環境をより良くしていく取り組みを押し進めるため、講座形式での環境改善施工にも取り組んでまいります。土壌の水と空気のめぐりを整える「大地の再生」の視点による施工法を実践作業でお伝えしてまいります。

11月の3日間に講座の第一回「水脈と車道づくり」を開催しました。3日間でのべ18名(8名、7名、3名)での活動となりました。当日の様子をレポートします。

私たちの活動する里山の入口に、車が乗り入れられる約30mほどの道と、その脇を流れる沢水の水路の整備に取り組みました。車が乗り入れても大地を傷めない車道づくりに挑んでいます。

ここは里山を流れる沢水の出口にも当たり、里山全体の水脈環境を整える上で重要な箇所です。沢水が円滑に流れ出ることができるようになれば、里山全体の水脈の流れも円滑になり、里山の広い範囲の環境改善に繋がっていきます。

以前整備したが1、路面はボコボコで通りにくく、雨が多いと路面にぬかるみができるようになってきた。2023年8月の様子
  1.  この道は、2018年、2020年に「大地の再生」の提唱者である矢野智徳氏をお招きし、大地の再生講座を開催したときにも施工した箇所です。当時は、沢水が溢れて、道がぐちゃぐちゃで草も生えない地面の状態でしたが、水脈を通したことでみるみる改善していきました。水脈には、割り竹や竹穂や落枝などを材として溝に入れ込んでいきました。溝のなかで枝葉が絡むしがらみ構造が、水と空気が流れる間隙を確保しつつ、流れてくる土砂の泥をこし、そこに住み着く動植物の働きで水脈構造を安定させていく、いわゆる暗渠となる施工法です。ところが、数年経ってみて、年間通して流れる水の量が意外と多いことが原因してか、泥づまりが発生して水が溢れて路面に水たまりやぬかるみができる状態が観察されるようになってきました。そのため今回の取り組みで、水脈の溝に材を入れずに、開渠にする方法に変更することにしました。 ↩︎

まずは、道づくりの材料をそろえる作業から。最初に、整備する道に接する竹林の間伐を行いました。伐採した竹は、竹穂と竿に分けて、竿は粉砕機で粉砕しチップにして、道づくりの材料とします。材料はできるだけ山林内にある物を利用して、その地で物質を循環させます。

竹林の拡大を抑えて、トンボ・ビオトープを作っている池へトンボが飛んで来やすいように上空の開放性を確保する目的もあります。

つぎに、土留め材とするための間伐丸太を里山の中腹から集めてきました。長さ2~4m、太さ・重さまちまちの丸太を30本くらい数百メートル引きずって下ろしてきました。こういう作業は、人手が多いと本当にはかどります。

材料集めが終わったら、車道脇の水の道の掘削です。重機で荒く掘ってから、溝の形や水の流れを整えるように手で掘ります。掘ってみると流れが悪く水が滞っている所は、土がグライ化して臭いにおいを発していました。

溝に焼いた杭を打ち込み、土留となる丸太を仕込んでいきます。そして、丸太の裏に、グリ石(これは購入品、割栗石)を土に差し込むように、ひとつひとつ打ち込んで裏込めしていきます。同時に石の間には、稲わら、炭、くん炭、竹穂なども差し込みます。炭化させた杭を使うこと、炭を入れること、有機物を入れることで、周囲の植物の根や菌類などの土壌生物がそこに入り込んでくれるようになり、土の中の透水性を確保しながらも、安定した地形が永く保たれるようになります(かつての土木は、有機物と無機物を絶妙に組み合わせて行われていました)。

掛矢で杭を打ち込むときには、「えいっさー、えいっさー」などと自然と声が出てきて、みんなの間に一体感が生まれます。また、稲わらの匂いは、作業中の心地よさを生んでくれます。ひとつひとつ丁寧に手作業を行っていると、五感がよく働く、自然物と向き合う時間が生まれます。

水路側の溝だけでなく、道を横断する水脈溝も掘り、路面に集まる水を水路側へ誘導します。ここも、丸太、焼き杭、グリ石、周囲の砂利、炭、くん炭、稲わら、落ち葉など、無機物と有機物を組み合わせて造作します。車が通るので、車圧にも耐える水脈構造をつくります。

さらに、里山全体の水の流れを妨げる主要因にもなっているコンクリート擁壁側にも水脈溝を掘りました。横断水脈を通じて、水路側の溝につなげています。擁壁側の溝は、普段は水が流れていないので、枝葉を入れ込んだシガラミ構造の溝にしています。

さいごに、掘削した土をならして路面を整地します。粉砕した竹のチップや炭、稲わら等を数層に挟み込みながら、土を敷きならします。表層の土の中に、水と空気の動く隙間をつくり、他の生き物との共生で、車が通っても路面が締め固まらない路面づくりを狙います(頻繁に車が乗り入れる訳ではないので砕石等は利用しませんでした)。

道は、歩いていて心地よく、柔らかい風情を醸し出してくる仕上がりとなりました。路面のでこぼこがなくなり、車の乗り入れもしやすくなりました。横断水脈の上も問題なく通行できます。今後、水の流れ方や草の生え方などを観察しながら、よりよい道に育てていきたいと思います。

ご参加いただきました皆様、ご協力いただきましてありがとうございました。この取り組みは、「地域の自然を地域の人々で守り育て、未来に豊かな自然を受け継いでいく」という当団体の趣旨に基づいた活動です。地域の方々のご協力を必要としております。より多くの方々にご参加いただけますと嬉しく思います。

次回は今回作った道の一角に、物置小屋をつくります。ビス、釘をあまり使わない組み方で、子供たちと一緒にトントンカンカンと、小屋を作りたいと思っています。

*本プログラムは一般社団法人 コンサベーションアライアンス・ジャパン「アウトドア環境保護基金」2022年度前期助成プログラムにより運営しています