6/21 黒米の田植え〜冬水田んぼキックオフイベント開催レポート:復田した田んぼに黒米を植える

6/21 黒米の田植え〜冬水田んぼキックオフイベント開催レポート:復田した田んぼに黒米を植える レポート

6月21日(日)、いつもの里山と同じ狩野川流域の休耕田で「黒米の田植え〜冬水田んぼキックオフイベント」を開催しました。地元の親子を中心に10名の方にご参加いただきました。

環境省関東環境局「令和の名水づくり・里海づくり地域支援事業」に選定された「伊豆市修善寺 “冬水田んぼ黒米” ブランド化事業」の初回イベントです。NPO法人ホールアース自然学校とともに構成する修善の森ヘルスツーリズム協議会による取り組みで、3月末から復田を進めてきた田んぼが舞台です。


冬水田んぼとは

稲を刈ったあとも、冬のあいだずっと水を張り続ける。そうした田んぼを冬水田んぼと呼びます。伊豆半島は河川こそ多いものの、池や沼といった止水環境に乏しく、水田はその数少ない止水環境です。人が米をつくるために水を張り、その営みが結果として生きものの棲む場をつくってきた。自然のなかで人が果たしてきた役割のひとつなのだと思います。冬も水があれば、田んぼは一年を通して水生生物の住処となります。

この日はまず、事業の趣旨をご説明しました。環境に配慮した農法で地元特産の黒米を育て、その再興を通じて地域の自然と水環境を守り、あわせて地域経済の活性化にもつなげていく、そうした取り組みです。

水が溜まるまで

3月末から、休耕していた田の復田にとりかかりました。長い道のりでした。畦をつくって水を張っても水が溜まらない。畦を塗り、田を均し、田の面を踏みしめ、また塗り直す。その繰り返しでした。

畦の内側、田面の外周に沿って「江」と呼ばれる溝を掘ってあります。田面より深く掘った溝で、田植えや稲刈りの時期に水を抜いても、ここには水が残ります。田面が干上がっても、生きものが逃げ込める場所です。

5月初頭、ようやく江に水が回るようになりました。田面に水が溜まるまでには、さらに時間がかかりました。この田んぼは上下2枚に分かれています。田面に水が溜まるようになったのは、上の田で5月23日ごろ、下の田は6月17日ごろに。田植えの直前でした。

生きもの調査

江に水が入ってから1か月半、田の全面に水が溜まってからは数日。それでもどんな生きものが来ているのか、調べてみることにしました。参加者の皆さんに田んぼへ入っていただき、たも網ですくった生きものを全員で観察します。

ちょっと前まで水のなかった場所にガムシやゲンゴロウのなかまなどの水生昆虫がたくさん見つかりました。ゲンゴロウ類の幼虫も多数捕獲され、この田んぼが繁殖の場として使われ始めていることが分かりました。おそらく最初に集まってきたのは、先に水の入っていた江だったのでしょう。水があれば、生きものはこれほど早くやってくるのかと驚きました。

あわせて、ホールアース自然学校の馬場さんから、伊豆半島の水生生物を取り巻く現状について解説がありました。水田の耕作放棄、農薬の影響、コンクリート張りの水路。生きものが減っていく理由はいくつもあります。参加者の皆さんと対話しながら、冬水田んぼの取り組みがその改善にどう寄与するかを解説しました。

田植え

苗代から黒米の苗をはがし、根をほぐして植えられる状態に整えます。そして田植えに。

復田したばかりの田んぼは、石がゴロゴロ埋まっていて、表土のトロトロ層もまだできていません。手では苗を挿し込めず、ドライバーで穴を開けようとしても石に当たって刺さらない箇所が多くありました。それでも一本ずつ、丁寧に植えていきます。昼食をはさんで午後まで作業は続きました。

石に阻まれて思いのほか時間がかかり、この日のうちには植えきれませんでした。残りは後日、あらためて植え付けました。

黒米の試食

昼には、修善寺地域で流通している市内産の黒米を使った黒米餅をご用意しました。

黒米はかつて修善寺の特産品として奨励された作物ですが、近年は作付けが減っています。独特の風味と色を楽しんでいただけたようです。

試食をしながら、黒米の持つ健康効果や、今後この事業で目指す地域内での商品化についてもお話ししました。参加者のなかには地域の飲食業に関わる方もいらっしゃったので、今後の協働を呼びかけました。

モリアオガエルの産卵床づくり

午後の田植えを終えたあと、モリアオガエルの産卵床を整備しました。

モリアオガエルは静岡県のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されており、県内では減少傾向にあります。イベントの直前、この田んぼの畔の法面に産卵が確認されていました。

モリアオガエルは本来、水面にせり出した木の枝先などに泡状の卵塊を産みつけます。ところが整備したばかりのこの田んぼの周りには、適当な樹木も丈夫な草もありません。見つかった産卵場所は、本来産卵するには不適切な状態でした。

そこで、切り出してきた木の枝を畔に斜めに打ち込み、水面にせり出す位置で固定しました。人の手で産卵床をつくる作業です。作業をしながら、モリアオガエルの生態と産卵環境について解説しました。

農業と自然の共生を目指す、その具体的な一例をお見せできたのではないかと思います。

これから

水を入れてまだ間もない田んぼに、これだけの生きものが集まってきました。もともと止水環境の少ない伊豆半島で、この田んぼがその受け皿のひとつになっていきます。黒米も、地域の産品として根づかせていきたいと考えています。

冬には餅つきイベントを開催する予定です。決まり次第、あらためてご案内します。