
概要
静岡県伊豆市、狩野川の上流域にあたる修善寺周辺の2か所の農地を田んぼに戻し、今年から黒米を育てます。冬のあいだも水を張ったままにする冬水田んぼの手法を用い、肥料も農薬も使いません。
黒米はかつてこの地域の特産品でした。作り手が減って途絶えかけているこの品種を、環境と共生する育て方で復活させます。耕作放棄された田に水を戻すことは、伊豆半島に乏しい止水環境を取り戻すことでもあり、流域の水循環を支える働きを呼び戻すことでもあります。
収穫した黒米は、地域の飲食店や加工業者とともに料理や菓子として形にし、修善寺を訪れる方に届ける道筋をつくります。田植えや収穫、生きもの調査には地域の方にも参加していただきます。NPO法人ホールアース自然学校との共同事業です。
| 事業名 | 伊豆市修善寺「冬水田んぼ黒米」ブランド化事業 |
| 実施期間 | 2026年5月〜2027年2月 |
| 活動場所 | 静岡県伊豆市(狩野川流域) |
| 採択事業 | 環境省関東環境局「令和7年度(補正予算)関東地方令和の名水づくり・里海づくり地域支援事業」 |
| 実施体制 | 修善の森ヘルスツーリズム協議会(NPO法人ホールアース自然学校/修善の森プロジェクトの会) |
活動説明
修善寺周辺の2か所の農地を田んぼに戻し、冬水田んぼの手法で黒米を育てます。流域の環境を回復させることと、地域の特産品をつくること、この2つを同時に進める事業です。
伊豆半島には、水の溜まる場所が少ない
一級河川の狩野川のほか小規模な河川は流下するものの、池沼は限られ、利水も河川の利用が中心で、ため池のような二次的な止水環境にも恵まれません。こうした土地柄のなかで、水田がつくりだす止水環境が、止水に依存する生きものに与えてきた影響は相対的に大きいと言えます。この地域にはかつてスジゲンゴロウやゲンゴロウの生息記録がありますが、農薬や化学肥料の普及と水田の減少により、いずれも地域絶滅したとされています。放棄された田に水を戻すことは、失われてきたこの環境を取り戻す作業でもあります。
水を張った田は、流域の水を支える
農地は食べものを生産する場であるだけでなく、洪水を防ぎ、土砂の流出を抑え、地下水を涵養するといった多面的な機能をもっています。耕作放棄地の増加は、生産力の低下にとどまらず、水循環の観点からも流域の人々の暮らしに関わる問題です。修善寺周辺は狩野川の上流部にあたります。復田によって回復する涵養機能と調整機能は、取り組みの規模が広がるほど、下流域を含めた流域全体の水循環の安定につながっていきます。
冬も水を張ったままにする
冬期も湛水を続けることで、田の底に粒子の細かい泥の層が維持され、生産性の高い土が育ちます。雑草の種子が埋没して発芽が抑えられるため、現在の米づくりでは一般的となっている除草剤を使わずに栽培できます。通年で水があることは、水生生物にとって止水の生息環境が提供されるということでもあります。事業地の近隣では、コウベツブゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、コガムシ、ツチガエルといった止水環境を好む絶滅危惧種が確認されており、これらが定着することを期待しています。
黒米を、もう一度地域の特産品に
黒米は旧修善寺町の時代に作付けが奨励され、温泉街の飲食店や学校給食にも使われてきました。その文化が残る一方で、作り手が減り、特産品として打ち出せるだけの収穫量はもう見込めません。環境への負荷を抑えた育て方という新しい価値を加え、地域の飲食店や加工業者、行政、大学とともに、料理や菓子としての商品化を検討します。黒米が売れれば作付けが広がり、作付けが広がれば流域の環境が良くなる。その循環をつくることが、この事業の目指すところです。
なお本事業は、2024年度に環境省の良好な環境創出活動推進モデル事業として取り組んだ「修善の森ヘルスツーリズム構想」の後継にあたります。前回は、人と自然との関係を結び直す試みを「健康」を切り口に実施し、今回は「農」と「食」を切り口に実施します。
活動の目的
- 耕作放棄地を復田し、止水環境を取り戻すことで、流域の生物多様性と水循環の回復につなげる
- かつての特産品である黒米を、環境と共生する育て方という新しい価値とともに再興し、地域の経済が回る仕組みをつくる
今年度の取り組み
- 2か所の農地で冬水田んぼによる黒米の試験生産を行う
- 田んぼとその周辺で生物相調査を行い、冬水田んぼが地域の生きものに与える影響を調べる
- 田植えと収穫祭を開催し、地域の方とともに作業しながら取り組みを広く知ってもらう
- 農業体験や自然観察を組み合わせた体験プログラムを検討する
- 黒米の商品化と販路を検討するワーキンググループを立ち上げる
- 冬水田んぼの先進地である宮城県大崎市への視察を行い、生産やブランド化の知見を得る
記録
イベント
生物調査
| 第一回 | 2026/7/15(水) | 植物・水生生物 | 速報 / レポート |
| 第二回 | 2026/9/16(水) | 植物・水生生物 | 速報 / レポート |
視察・ワーキンググループ
本事業は環境省関東環境局「令和7年度(補正予算)関東地方令和の名水づくり・里海づくり地域支援事業」の採択を受けて実施しています。
