里山の環境学習~トンボ・ビオトープづくり(2023年度第一回)「池づくりと沢の整え」レポート

里山の環境学習~トンボ・ビオトープづくり(2023年度第一回)「池づくりと沢の整え」レポート レポート

昨年度から引き続きトンボ・ビオトープづくりを継続しています。ある程度の成果を得られた初年度の取り組みをさらによい生物空間ビオトープとするべく、手をいれる範囲を拡げて今年度も取り組んでいきます(今年度の計画はこちら)。

2月18日に行われた里山の環境学習会の様子をお届けします。大人子供合わせて8名の方にご参加いただきました。昨年度までは里山を流れる沢の下流部を中心に手を入れていましたが、今回から沢の上流部に手を入れていきます。新たな止水域と流れを整える回となりました。

いつものとおりまずはビオトープの観察をして生物が生息している現状を感じるところから始めました。

各自、網を入れて生物採集、6箇所の池での生物の生息状況を調べました。池ごとにトレーを分けて、生物を見ながらビオトープの先生に講義していただきました。ヤゴの見分け、生息場所の違い、トンボの生態、昨年度の取り組みの効果、ビオトープを整備する意義、この里山での今後の課題などを説明していただきました。

どの池にも生物が観察され、ヤゴも多数定着し、ビオトープが機能していることが確認できる結果となりました。

現状このビオトープの課題として、ひとつは大雨が降るたびに土砂が流されせっかく作った池が埋もれてしまい、生物が生きにくい環境となってしまうこと、もうひとつはヤゴ以外の生物が少なくヤゴ同士の共食いが起こりやすい状況にあることが挙げられます。

それらの課題を克服するべく、沢の環境を整える作業に移りました。

作業をする前にまず、沢の中の落ち葉や土の下にいる生物を殺してしまわないよう救出して一時避難させました。きれいな水の目安となる指標生物のヘビトンボや、カゲロウの幼虫、ユスリカの幼虫などが確認されました。昨年度までほとんど生物が観察されなかったこの沢の上流部にも、生き物がたくさん入り込んでいることがわかり、思いがけず嬉しい成果となりました。下流部の整備の好影響が出ているようです。

そして整備作業に入りました。沢筋上流部の水が湧き出している部分までの30ー40mの区間を整備しました。

流れの悪いところ、淀んでいるところの流れをよくしたり、落差のあるところに深みを設けて溜まりをつくるなどして、沢水の動きをつくりだしました。深みや落差をつけることで、水の水平方向の動きだけでなく、地中に潜ったり湧き出したりという垂直方向の動きをつくりだします。すると地中の見えないところで滞っている空気や水が動き出すきっかけとなり、里山全体の土壌の雨の染み込みやすさの回復につながります。それが大雨時に土砂が流れるのを防止することにも繋がります。沢を少しいじることが、環境全体の改善につながることをねらって整備しています。

また、転がっている石や落ち枝などを、土留めや、水の溜まり(止水域)の縁石や、川床の差し石などに用いています。石の裏には枝や落ち葉など有機物を挟み込んで、生物のすみかと、水と空気の流れる空隙をつくります。自然にあるものを利用して、水が流れるところ、溜まるところ、とどまるところなど多様な水の環境をつくり、生物の住みやすさい環境に整えています。

開始前は沢の10m程度の範囲の整備で終わるかなと思っていましたが、参加者のみなさんの意欲が高く、先へ先へと進んで、30m以上の範囲を整備することができました。整備後は、水の流れる音が顕著に聞こえるようになり、やる前とやった後の違いを明らかに体感することができました。

さいごに振り返りの時間。「自然に触れて、変化を体感できることはなかなかないので、参加してよかった」との中学生の感想が聞けました。

半月後に整備したエリアを観察すると、強い雨が降った後も造作した地形が維持されていて、澄んだ水が音を立てて流れている様子が観察することができました。

*本プログラムは一般社団法人 コンサベーションアライアンス・ジャパン「アウトドア環境保護基金」2022年度前期助成プログラムにより運営しています