里山の環境改善講座(2023年度第三回)「高木の樹勢回復」レポート

里山の環境改善講座(2023年度第三回)「高木の樹勢回復」レポート レポート

本年度(2023年10月~翌9月)より、里山の環境改善講座と題して、環境をより良くしていく取り組みを押し進めるため、講座形式での環境改善施工にも取り組んでいます。今回はその第三回「高木の樹勢回復」です。里山内に林立する樹齢100年超えの高木の元気を取り戻すための取り組みです(企画意図については講座案内をご覧ください)。

2日間の実施を予定しておりましたが、雨のため初日は中止、2日目のみ1日間(この日も午後雨予報のため短時間)の開催となりました。スタッフ含め5名での少人数で催行しました。当日の様子をレポートします。

いつものとおり里山内を歩きながら、里山の環境の現状を観察、解説することから開始しました。今回は環境の健康度合いを感覚的に図るための、環境の見立て方に重きをおいて解説しました。

小一時間ほど里山内を散策しながら、地上・地下の水の流れ(水脈)について、水脈を寸断するコンクリート構造物の弊害について、水の流れや地形が果たす環境機能について、全国的に拡がる高木枯れの現象や、樹勢や土壌の見立て方などについて観察・解説しました。

そのあとは環境改善の実践作業。手道具でできる土壌の水と空気の巡りを良くする施工方法(通気透水改善施工)を実践を通してお伝えしました。

今回行ったのは、土壌の浅い層に手をいれる表層改善です。表層のみの手入れでも、深い層の水脈と連動するきっかけを作ることができ、自然の力(雨、風、根、土壌生物など)の応援によって、水脈環境を改善する大きな効果が期待できます。

まず、微妙な地形の変化を読み取って、低くなっているところに溝を切り、堀った土を高いところに上げて、地形の落差を設けることによって水と空気が動くきっかけをつくります。溝にはさらに移植ゴテなどで点穴をつくり、水が浸透するきっかけをつくります。溝や穴には炭や落ち葉を入れてから、溝が崩れないように周囲にある落ち枝などでシガラミをつくります。さいごに表土を露出させないように、落ち葉などでマルチングします。枝や落ち葉などの有機物が地形や水脈機能を安定させる働きをもたらします。これを高木周りの土壌に複数箇所施工しました。

なんてことはない作業ですが、こうした作業をコツコツと行えば、樹木の根は深い呼吸を取り戻し、本来の健康な姿を見せてくれるようになるはずです。

5名で1時間程度の実施でもそれなりに広い範囲に手をいれることができました。今後もコツコツと実施していこうと思います。人数が増えれば、あっという間に山全体の手入れができます。多くの方に関わってもらえると嬉しいです。

参加者の方の感想で「実際に体を動かして自ら体験することでわかることがある」とのお言葉をいただきました。実際の現場で自分の感覚を働かせて手を動かしていくこと、その大事さを今後もお伝えしていこうと思います。

*本プログラムは一般社団法人 コンサベーションアライアンス・ジャパン「アウトドア環境保護基金」2022年度前期助成プログラムにより運営しています