6月13日(土)、修善寺の里山でホタル観察会とホタルの里づくりワークショップを開催しました。近隣の地域住民9名様にご参加いただきました。
第21回TOTO水環境基金に採択された新しいプロジェクト「修善の森 流域の水といのちを育むホタルの里づくり」の初回イベントです。舞台は、これまで手つかずだった北西の沢。この沢にわずかに自生するゲンジボタルの生息環境を、3年かけて整えていく計画のスタートとなる一日でした。
日中に里山ツアーと北西の沢での環境学習を行い、日没後にホタルの観察を行いました。
里山ツアー
集合後、北西の沢へ向かって歩きながら、半経寺山の里山を案内しました。
途中、これまで3年かけて整備してきたトンボビオトープを観察しました。同じ山の中に、すでに手が入った沢と、これから手を入れる沢がある。その対比を見ていただくことで、これから何をしようとしているのかをお伝えしました。




事業説明とホタルの生態学習
北西の沢に到着後、本プロジェクトの主旨を説明し、続いて、ホールアース自然学校の馬場さんによるゲンジボタルの生態学習を行いました。実際に生息が確認されている沢筋で、目の前の環境を観察しながらの解説です。
ゲンジボタルは卵、幼虫、蛹、成虫と成長する過程で水中から陸上へと生活の場を移していきます。幼虫が育つには流れと餌となるカワニナが、蛹になるには上陸できる中州や岸が、産卵には水際のコケが、成虫には飛翔する空間と休息する木陰が必要です。一段階でも環境が欠ければ、この沢で世代をつなぐことはできません。
ホタルが必要とするこれらの環境は、突き詰めれば「健全な沢がある」ということに尽きます。森の浸透性・通気性を回復させ、水の貯留と湧出を促すことで、一年を通じて安定した流れのある沢になる。あわせて、草が生えコケが乗り表層の土壌が流れずに安定すれば、ホタルやカワニナの生息環境が守られます。
そして沢を整えることは、この沢だけの話にとどまりません。水脈は山全体でつながっているため、沢筋の保全は半経寺山という山そのものの保全につながっていきます。ホタルを目的とするのではなく、環境全体の健全さを映す指標とする、そうした考え方を、参加者の皆さんと共有しました。



カワニナ調査
ゲンジボタルの幼虫は、カワニナという巻貝を餌にして育ちます。飼育下の調査では、1匹が成虫になるまでに平均24匹のカワニナを食べたという報告もあるそうです。つまりカワニナがいなければ、ホタルは生きられません。
参加者の皆さんと一緒に沢に入り、市民参加型の生物調査としてカワニナの生息状況を記録しました。
結果は、厳しいものでした。約6メートルの区間を調べて、確認できたのはわずか2個体。ゲンジボタルの保全には、大小さまざまなカワニナが大量に生息していることが前提となります。今の状態では、ホタルの幼虫を支えるだけの餌資源がありません。
原因はいくつか考えられます。ひとつは、表層の土壌が沢に流れ込み、その土砂がカワニナを埋没させてしまっていること。もうひとつは、大雨時の増水によって、下流の三面張りコンクリート河川へと流出してしまっていることです。カワニナをいかに増やしていくかが、今後の取り組みの大きな課題になります。




ゴミ拾い
あわせて、沢の周辺に散在しているゴミの回収も行いました。この場所は、近隣住民の植物残渣の長年の捨て場所にもなっているので、それに紛れて土に還らないゴミが多いのです。皆様、環境を良くするために積極的にゴミを拾ってくださいました。


日没後、ホタル観察会
一度解散して各自夕食、日没後に再集合。いよいよホタル観察です。
ホタルにライトを向けないこと、夜間の足元や生きものへの注意をお伝えしてから、沢へ向かいました。観察は捕虫網で一時的に捕獲して性別を確認し、調査後はすべて放しています。
結果は、オスの成虫を6個体、そして一齢幼虫を3個体確認することができました。この日は、今シーズン観察してきたなかで最も多くのホタルの飛翔を見ることができ、捕獲できた個体数以上のホタルが舞っていたような印象でした。この沢にゲンジボタルが確かに生息していることを、参加者の皆さんと一緒に確認できたことは大きな収穫でした。
幼虫も光ります。水際の浅いところで、成虫のような点滅ではなく、ぼんやりと灯るような光を放っているのを見つけました。この沢で幼虫を確認できたのは初めてのことです。幼虫がいるということは、この場所でホタルの世代が更新されているということ。数は少なくとも、命がつながっている証拠です。



参加者の皆さんから
アンケートにご協力いただいた方から、こんな声をいただきました。
伊豆の豊かさと、森林が多様な生物を生み出す源であることを再認識しました。脆弱なホタルの環境を3年後に生息地として復活させる活動に、共感者とともに参加してみたいと思いました。
小さな生き物に触れ、森の役割を体感し、自然との付き合い方を考えるきっかけになった。気象変動への警告ともいえる事象に、足元から解決策を考え実施していく、非常に重要でチャレンジ精神にあふれる活動だと感じた。
参加してくださった小学生のお子さんは、オスとメスの見分け方を覚え、幼虫も光ることに驚いていました。
これから
ホタルは飛んでいた。けれどカワニナは少ない。いるにはいるけれど、このままでは続かない。
この短い沢の区間を保全することは、この場所の自然を守るだけではありません。沢から細粒化された土砂を流さないこと、泥を流さないこと、水脈を詰まらせないこと。それは狩野川へ、そして駿河湾へとつながる流域全体の健やかさに関わっています。
流域の環境をよくしていくために、この沢から手をつけていく。そしてもうひとつ、たった数十年前にはあった、生きものがあたりまえにいる景色をこの場所に取り戻したいと思っています。
これから定期的な整備活動を重ね、3年かけてこの沢を整えていきます。沢の流路を確保し、法面を整え、水と空気の流れを取り戻していく作業です。体力や経験は問いません。里山に関わってみたい方、ホタルが舞う沢をご自身の手で育ててみたい方、ぜひ一緒に汗をかきましょう。
整備活動の日程は、決まり次第このブログやSNSでお知らせします。お気軽にご参加ください。
この活動は第21回TOTO水環境基金のご支援をうけて実施しています。




